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  • 執筆者の写真快適マンションパートナーズ 石田

マンションから「フロントマン」が消えた…管理会社が“突然”撤退した「理由」

更新日:2022年7月4日



 2022年3月25日の現代ビジネスの表題の記事を紹介します。


「管理委託契約」の更新を断られた

 マンション管理は長期にわたる継続性、安定性があって初めて安心や安全、快適なマンションライフが期待できるものです。そのため、管理業務を管理会社に委託せず、経験のない管理組合員が自分達自身で行う、いわゆる自主管理のマンションは、「国土交通省の平成30年度のマンション総合調査」では6.8%と少ない数字になっています。

 一方で、マンション管理の専門的知識や能力、技術を有する管理会社に全部管理委託方式や一部管理委託方式など、何らかの形で委託している管理組合は90%以上です。

 管理組合と管理委託契約を結んだ管理会社は、実際の業務を行うにあたりマンションそれぞれに担当者を配置しています。一般的にフロントマンと呼ばれ、マンション管理に必要な法律、建物・設備の知識を持っているため、住民たちで作る管理組合にとって、とても頼りになるマンション管理のプロフェッショナルです。

 この、マンションにとって欠かすことのできないフロントマンについて、管理会社から突然、「契約更新を行わないなどと更新を拒否された」、「契約解除を通知された」というご相談がこのところ多くなっています。一体なぜでしょうか。

 理由は様々だと思いますが、今回は信頼関係を構築できない住民の態度・対応などが背景にあるケースに焦点を当てて解説したいと思います。


相見積もりを検討した結果…

 都内の築35年超えの数百戸規模のマンションでの話です。管理会社は、管理委託契約に基づいて3ヵ月前に管理組合に対して管理委託契約更新の申し出を行いました。

 理事会で契約更新の可否について協議したところ、管理会社に対して不満を持っている一人の理事から、30年以上も同じ管理会社と委託契約しているので、複数の管理会社から同じ契約内容で相見積もりを取って、現在のサービスが金額に見合う内容かどうか検証してはどうか、という意見が出されました。そこで、理事会で「管理会社の見直し」を決議し、「管理会社見直しの相見積もりの募集」を掲載したところ、それを知った管理会社から契約更新を行わないことが通知されてしまったのです。

 管理組合は以前、「相見積もりを取る」と言えば委託費を減額できたこともあったのでその点も期待していました。しかし管理会社側は、人件費が上昇する中、ぎりぎりの価格で契約しているにもかかわらず、相見積もりによって価格勝負になると採算が合わないので撤退する道を選んだことが考えられます。


「言うことを聞かなければ」、カスハラの結果…

 もう一つご相談をいただいたのは、首都圏の築25年のマンションでの事例です。

 そのマンションは、建物を建設・販売したデベロッパーのグループの管理会社が管理していましたが、多くの人が暮らす集合体であるマンションにはさまざまな意見を持った人がおり、「マンション管理」に対する意見も同様です。

 このマンションでは、管理会社に対し、「管理員の時給が1000円なのに対して、契約書に記載されている管理員業務費用を時給に換算すると大幅に乖離がある。管理会社が詐取している」と発言したり、委託費の大幅な値引きを要求して「俺は客だ、言うことを聞かなければ管理会社を変えるぞ」と大声で怒鳴ったりするなど、いわゆるカスハラの行為を繰り返す住民が一部いたようです。

 管理会社もその都度、管理員に支払う人件費には、直接費用の時給だけではなく、交通費、社会保険料、被服費等の間接費用が含まれることを丁寧に説明しましたが、一部の住民が会社やフロントマンを誹謗中傷するチラシを全戸配布したり、責め立てたりすることが続きました。

 そして、こうした住民がマンション管理組合役員に立候補して理事となり、フロントマンが委託契約外の理不尽な要求をされるなどしたため、管理会社から従業員の雇用を守るため契約更新を断られたということです。住民と管理会社との信頼関係が構築できなかったがゆえの結果だと考えられます。

 そしてどのような事情であれ、マンションの管理会社が変更になると住民たち管理組合側は様々な手続きに追われることになります。


管理会社が変わると手続きも大変…!

 国土交通省から公表されている『マンション標準管理委託契約書』では、第19条に、『甲及び乙は、その相手方に対し、少なくとも三月前に書面で解約の申入れを行うことにより、本契約を終了させることができる。』という規定があるので管理会社から解約を申し出ることができます。

 管理委託契約の更新についても、第21条で『甲又は乙は、本契約を更新しようとする場合、本契約の有効期間が満了する日の三月前までに、その相手方に対し、書面をもって、その旨を申し出るものとする』となっています。

 管理会社が更新を申し出しない場合や管理組合が更新を申し出しても管理会社がそれに応じない場合には契約は終了することになります。

 管理会社から、契約の打ち切りや委託契約更新を拒否されると、契約が切れるまでの3ヵ月間の中で新しい管理会社を探して総会に諮り、承認決議を取らなければなりません。そして、新しい管理会社が現在の管理会社と引継ぎ作業しなければなりませんし、新しい管理員や清掃員等管理スタッフも募集しなければなりません。

 それに加えて、管理会社が変更になると管理費や修繕積立金を引き落とすための収納代行会社も変更になる場合が多いので、組合員全員から金融機関の口座振替用紙に銀行の届出印の押印を取り付けなければなりません。

 これは案外大変で、届出印の陰影が薄かったり届出印が違ったりして時間がかかります。それを金融機関に提出して処理するので一般的に2~3ヵ月位かかります。その手続きがスムーズにいかないと、管理会社が変更してしばらくの間、組合員の管理費や修繕積立金が管理組合の口座に入金されません。

 ですから、一般論として、スムーズにこうした作業を行うにはまず、管理組合が新しい管理会社の候補の数社から見積もりを取り、各社のプレゼン会を開催して組合員の意見を参考に理事会で1社に決めます。そして総会で承認決議を取ってから、現在の管理会社に対し、3ヵ月前に解約通知を送付します。

  しかし、管理会社から、契約更新を拒否されたり契約解除の通知を受けたりすると、このような対応ができません。管理組合は新しい管理会社を探すのに、説明会を開催したり複数の管理会社からプレゼンを受けたりする時間が取れないことから、よい管理会社と巡り合うことは難しくなります。


日常生活にも影響が出る…!?

 マンション管理業務は裾野が広く、内容も複雑で高度な技術や専門性を必要とします。また、最近は新しい設備機器の開発などにより、ますます業務が高度化・複雑化しています。 しかしながら、管理組合の役員は、マンション管理の専門家ではなく、本来の職業として会社勤めをされている方など、ほとんどの方が素人です。そのため、管理組合の役員としてマンション管理業務に専念することは困難ですし、管理会社の代わりに業務実施することは不可能です。ですから、管理委託契約が解除されると、居住者の日常の生活に様々な影響を及ぼします。

  まず、ゴミ出しの問題です。今までは、いつでもマンションのごみ置き場においておけば、管理員さんがごみ収集日になると各家庭のゴミを収集車が取りに来る集積場まで運んでくれましたが、それができなくなります。指定された曜日・時間に自分でゴミ出しをしなければなりません。

  専有部分の水が出ない、電気がつかない、ガスが使えないときの緊急対応も、今までは管理会社のお客様センターに連絡すればワンストップで済んでいたものが、全部自分でそれぞれの業者に連絡しなければなりません。

  そしてもちろん廊下、階段、敷地の清掃等は自分達でしなければなりませんし、来客用の駐車場等の共用施設の予約の割り振りや、共用部分の水道光熱費等の支払いも理事会でしなければなりません。


 今まで、不自由なく当然のように管理会社から安心、安全、快適、便利なサービスを享受していた居住者にとって大きな負担を強いられることになります。

 フロントマンは、一般的に一人で10~15の管理組合を担当しています。

 マンション管理会社の業界団体である一般社団法人マンション管理業協会の2013年の調査では、フロントマンの約70%が管理組合や理事会から管理委託契約にない様々な過剰な要求を受けたことがあると回答しています。

 一方、同調査でフロントマンとしてやりがいを感じるときはどういうときかという調査では、「理事会に信頼されていると感じるとき」が87.8%と一番高い数字で、その次が「理事会役員や居住者から、ほめられたとき」で、72.5%(複数回答)です。

 この調査からもわかるように、管理組合から、理不尽な契約外の要求をされたり、「俺は客だ、文句あるのか」と大きい声で怒鳴られたら、やる気をそがれてフロントマンの能力を発揮することができません。管理組合の役員や居住者が、お互いを敬い信頼関係を構築することで、フロントマンのモチベーションも上がり、マンションにとって良い提案をしやすくなります。そして、そのことが居住価値、資産価値の向上につながります。

 マンション住人が、管理員や清掃員に『お疲れさま』などと感謝の言葉をかけることが大切です。そして、管理会社からただサービスの提供を受けるという意識ではなく、自分達もそのサービスの一翼を担う気持ちで生活することが必要です。」


 管理員やフロントマンの人手不足から、収益性の低い物件や、深夜・早朝も関係なく、フロントマンを呼びつけ無理難題の苦情を訴えるクレーマーがいるマンションでは、管理会社から契約を打ち切られる例も出てきています。高松でも、管理組合が高圧的なマンションで、管理組合変更のリプレース騒動があったが、後を引き受けてくれる管理会社がいなくて大変だったという話を聞きました。

 香川県は管理会社の数も限られ、管理会社間で情報交換も行われているようで、上記のような問題管理組合の話もすぐに広がり、各社から敬遠されるケースもあるようです。管理組合自体の意識が変わらないといけない状況も発生しているように思います。


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