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  • 執筆者の写真快適マンションパートナーズ 石田

実家が空き家に、どうする? 家財整理に罪悪感、先送りしていると

更新日:2023年7月12日



 2022年12月11日の朝日新聞デジタルの表題の記事を紹介します。


「実家が空き家となったまま、処分を先送りしてしまうケースが増えています。

 背景には、家財整理の煩雑さや、家族の思い出を処分することへの心理的ハードルなど、別の課題があることが見えてきました。

 ただ、先送りしていると、さらに処分が難しくなることも。専門家は、「就職や結婚などで、実家に戻らないと決めた時から考え始める必要がある」と指摘します。

 では、どうすれば。実家の処分に苦労した女性のケースをもとに、空き家管理のポイントなどを専門家らに聞きました。


 千葉の実家をどうしようか――。

 茨城県つくば市の50代女性が頭を悩ませるようになったのは、2年前のことだ。

 父親が他界。残された母親が一人暮らしを続けるのが難しく、高齢者施設で生活することになった。施設探しと同時に、女性にふりかかったのは空き家問題だった。

 女性は、父親が生前、岩手県内の祖父母の空き家の管理に苦労していたのを間近で見ていた。

 「残しておけば固定資産税や庭木などの管理費、定期的に換気をしに行く手間や交通費など負担が大きい。早めに処分したいと思った」と振り返る。でも、処分は簡単ではない。親の意向もある。

 高齢者施設への入所が決まった当初、母親は実家にある家財へのこだわりが強く、残してほしいとの気持ちがあった。母はすぐに納得してくれないだろう。「処分まで10年はかかることを覚悟した」という。

 だが、女性の弟が説得を続けたところ、「迷惑をかけたくないから、好きにしていい」と売却を承諾してくれた。

 「『思い出の詰まった実家を残したい』といった思いの親が多い中で、母親が判断をしてくれたことで大きく動いた。一番高いハードルは越えた」と感じた。だが、家財整理などの心理的、身体的負担は大きかった。直面したのは、両親や家族の思い出が詰まったものを処分することへの罪悪感だった。両親の集めた工芸品がいくつかあった。エネルギー関連の仕事をしていた父親が、勤務先で家族と住んでいた中東で買ったペルシャ工芸の陶器などだ。

 イランの政情不安のため船便や航空便が使えず、重たい工芸品を手荷物で必死に持って帰ってきた小学校時代の思い出が浮かんだ。両親は「家宝」とも言って誇らしそうだった。

 「母親の許可はあるものの、家族の思い出の品を処分する精神的ダメージは大きかった。途中で投げ出したくなることもあった」と話す。処分後にせめてもと、手放した工芸品に似た製品を買った。


家財整理に3カ月、解体費などで300万円

 片付け自体の負担も大きかった。

 週2~3日、つくば市から千葉県内の実家まで車で1時間かけて通った。神奈川県内に住む弟も手伝ってくれた。

 父親の単身赴任時代に使った複数台の家具や、結婚式でもらった引き出物、おぼん20枚など同じ物もたくさん出てきた。

 着物や絵画などはリサイクルショップに持ち込み、炊飯器やトースターなどの小型家電は福祉施設に寄付。大型家電は家屋の解体業者が処分してくれるためそのまま残した。燃えないゴミは車に積んで直接、ゴミの処分場に持ち込んだ。

 「昭和世代の人は物を持ちたがる傾向があるので、大変でした。100キロくらいのゴミを車に積めて何度も捨てに行ったので、少なくとも1トン以上にはなるのでは」と女性は振り返る。

 家財整理を終えるまで、約3カ月。解体費など約300万円をかけて解体し、更地にして、昨年に無事、売却できた。

 女性から相談を受けて処分に向けて支援を担当した、NPO法人空家・空地管理センター理事の伊藤雅一さんは、「たとえもう使う予定がなくても、実家を処分するという意思決定は、簡単なものではない。家財整理や手続きの負担から先送りしてしまう人が多い中で、早めに対応できたことで、スムーズに売ることができた」と話す。


増える空き家、相次ぐ問題の先送り

 空き家問題に詳しい明治大の野澤千絵教授(都市政策)は「家財整理の煩雑さや、実家処分に心の整理がつかないことなどが理由でとりあえず置いておく『問題先送り空き家』が大きな問題になっている」と指摘する。

 日々の忙しさなどで対応を先送りにした結果、自分も高齢になり、売る・貸すに向けた気力や体力もなくなったり、年金暮らしで解体費用の捻出が難しくなったりして、放置され続けるケースもあるという。

 「就職や結婚などで実家に戻らないと決めたときから、実家の空き家化は始まっており、早めに考えることが重要だ」と野澤教授は警鐘をならす。

 空き家は、今後も増え続けることが予想される。総務省の住宅・土地統計調査(2018年)によると、空き家は全国に約849万戸あり、住宅の総数に占める空き家の割合は13・6%。野村総合研究所の予測では、33年にはさらに27・3%に上昇する。少子高齢化や核家族化などの影響がある。

 特に、持ち家率が高い団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる25年以降、空き家が急増する恐れがある。同センターにも、団塊ジュニア世代からの相談が増えているという。


売る・貸すための大原則は早めの処理

 なぜ、実家の空き家問題を先送りしてしまうのか。

 伊藤さんは、思い出の詰まった実家を処分することへのためらい▽「家を残してほしい」という親の思い▽家財整理や手続きが面倒▽相続した人の意見の不一致――などさまざまな問題が絡みあっていると指摘する。

 同センターは「売る・貸すための大原則は、所有期間をできるだけ短くして、早く処理すること」と呼びかける。

 固定資産税や庭木の剪定(せんてい)、修繕費などを合わせると、交通費を除いても最低年間10万~30万円はかかるとされる。

 所有期間が長くなると維持費がかかるほか、所有者の親が認知症などになって売却ができなくなり、先送りせざるを得なくなるケースも少なくない。

 親が認知症や要介護になるなどして意思確認ができない状態になってしまうと、親が亡くなって相続が発生しない限り、子どもは親の不動産には手をつけられなくなる。その場合、成年後見制度も利用できるが、実家などの財産の売却は家庭裁判所の許可が必要になり、売るのは一般的に難しいとされる。親の判断能力がしっかりしているうちに「任意後見制度」を利用する方法もあり、伊藤さんは「親が元気なうちに権利関係を確認して、実家をどうするのかについて親子の共通理解を育てることが大切だ」と話す。

 一方、「売却は不動産会社に仲介を頼むなどが一般的だが、何から始めればよいかわからないという状態の相談も多い。困った場合は関係機関に相談することも必要だ」という。


自治体に相談窓口も

 近年では、自治体にも相談窓口がもうけられている。

 埼玉県は7月から、空き家管理に詳しい県内のNPOに業務委託する形で、無料相談窓口を設置した。要望があれば現地を調査し、活用・管理策を提案するという。

 東京都世田谷区では、空き家の流通を促す事業を展開する空き家活用社(東京)と協定を結び、昨年11月に「せたがや空き家活用ナビ」を開設。相談すれば、無償で同社スタッフが、売買や賃貸だけでなく遺品整理や樹木の伐採など具体的な処分方針について、中立の立場で相談に応じて業者も紹介する。

 同社の和田貴充社長は「空き家問題は本質的には『人の問題』といえる。意思決定してもらうまでの道筋をいかに伴走するかが大切だ」と話す。」


 この記事にもあるように実家の空家問題は深刻です。一人っ子同士が結婚すれば、どちらかの実家をついでも一つの実家が余りますし、子供も高齢になれば、既に持ち家があり、実家は不要になります。先日知り合いに聞いた話では、実家の家財道具の整理に何回も実家に帰り、処分するのは本当に大変だったと言っていました。

 マンションであれば、遺品の整理さえできれば、賃貸に出したり、中古で売買することも、戸建て住宅に比べれば比較的楽ですが、持ち続ける場合には、管理費や修繕積立金の負担があります。親が元気なうちに、実家をどうするかも、話し合っておくことが重要です。


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